行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『ザ・ロード』 生き延びた先に何があるのだろう?それでも生き延びたいか・・・

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ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー / 黒原敏行訳

なんかね、自分がこんな荒れ果てた地球上の、たった一握りの生き残りだなんて、思っただけでぞっとする。もちろん生きたいと思うよ。思うけど、目の前は一面真っ黒な灰、木も植物も何もかも枯れ果て、生き物も死に絶え、かつては家だった建物も廃墟となって、息もできないくらいの暗闇に紛れて眠り、誰かに見つからないか怯え、何日も食べずに生きるなんてことができるだろうか。

できない。

人が人を食べる、そんな世界で生き延びたいとは思わない。

でも。 ひとりじゃなかったら? 子といっしょだったら? 子のために生き延びたいと思うかもしれない。子だけは生き延びてほしいと。

この父子は何のために生き延びようとしたのだろう? 火を運ぶため? 善き者であろうとして?

この道を南に進めば・・・、何がある?

幼い子がひとり残され、父の分も生きて南へ進む。ラストに希望は見えない。いや、見知らぬ男女に出会っただけでも一筋の光が見えたか。お互い慰め合うだけに終わるかもしれないが。何ともいえない。

怖い設定だね。アメリカが、世界が、地球が、終わってしまう。環境破壊か核爆弾か。

父子が一歩ずつ手探りで先に進む様子が淡々と描かれているが、淡々としたタッチ故に胸に刺さるものがある。文体も独特で、会話に鉤括弧がなく、それ故会話そのものがストレートに届く。父と子の思いが伝わってくる。

それにしても、登場人物はほぼこの父子だけなのに、この父子に名前はない。彼であり、パパであり、少年、それだけ。それもまたこの物語の不気味な世界観を表現している。

近未来の地球は今と何も変わらないと断言できるだろうか。