行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『旅の窓』 世界を旅した沢木耕太郎が切り取った風景 どんな環境でも人は飄々と生きている

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写真を一枚一枚、ゆっくり眺める。

たまにはこんな時間があってもいいよね。

文字に頼らず、見たまま感じる。

そのあと、作者の思いを読んで、あーそうかと思いを馳せる。

同感!だったり、そうなの?だったり、思わずにやりとしたり。

『旅の窓』 沢木耕太郎

内容

世界中を旅した作者が、たまたま出会った人、もの、景色を撮影した写真と、その時の作者の思いを文章にして見開きページに収めた作品集。写真は全部で81枚。日本で始まり、日本で終わる。

感想とか

そういえば私も若かりしころ、寝台特急に乗って旅したなぁ・・・と、遠い昔のことを思い出した。

沢木耕太郎の『深夜特急』シリーズをむさぼるように読んだなぁとか、ほろ苦い青春のひと時も思い出したりして、懐かしいやら恥ずかしいやら。

まぁそれはいいとして。

『旅の窓』は文庫版なので写真は小さく、紙も決して上質ではないのが残念ではあるが、作者がシャッターを押した時、その後見直した時の気持ちと相まって、豊潤な作品集になっている。

81枚のどれもに惹きつけられるが、その中でもよかったのをいくつか紹介する。

「生きる力」 

見渡す限り砂、砂、砂のサハラ砂漠の稜線を、散歩レベルで歩く地元ベルベル人を撮った1枚。人はどんな環境でもそれなりに、案外飄々と生きていけるものだと思った。

「一本道」

チベットの乾燥地帯、広大な土地に存在するのは自分たちだけと思いきや、目を凝らすと遠くに馬車が1台。これも「生きる力」と同じ。荒涼とした土地を横切り、どこかへ向かう人。木も水も何もないところでも人は生きていける。(横切るだけでこの土地には住んでないと思うけどね)人間はたくましい生き物だ。

「勝負師」

ネパールの首都カトマンズ、階段に座る老女を撮った1枚。横顔なんだけどなぜかしら惹きつけられる。どこか強くて、それでいて物憂げで、美人にすら見える。彼女は勝負師。サイコロを振って勝てばお客の賭け金をいただく。

「深夜のオモチャたち」

スペインのオンダリビアという街の古いオモチャ屋。窓に飾られたオモチャたち。深夜その窓が照らされ、おどろおどろしい(日本のかわいいオモチャとは明らかに違う)オモチャ(人形たち)が浮かび上がり、今にも踊り出しそう。きゃーッ!

「雲のようにふわふわしたもの」

イタリアのパルマ。通りで立ち話を始めた老紳士2人を撮った1枚。何を話しているんだろう? こんな会話か?と想像した作者の発想がおもしろく、思わずニヤリとしてしまった。

「砂漠の猫たち」

最後はみんな大好き動物の写真。サハラ砂漠のほとりのロッジで、2匹の子猫が折り重なるように寝入っている1枚。もぉこれは可愛いとしか言いようがない。

他にもまだまだあるのだけど、キリがないのでこの辺にしておこう。

写真集(写真だけ)もいいが、文章が添えられているだけで、さらにその1枚が身近なのものになる。

今度こういうタイプの作品を買うときは、せめて単行本サイズのものを求めることにする。