行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

日本の小説

『TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』 久しぶりすぎてストーリー忘れちゃってたけど、なぜかすらすら読めてしまう

『TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』 内藤了 まるで漫画だね。過去と現在をつなぐ地下道、おもて交番とうら交番、昭和と令和。うら交番に行った警察官は1年以内に命を落とすというジンクス。死体売買ビジネス・・・? ありえない設定、だけど気になる…

『黒牢城』 戦国の世のミステリー 謎解きはもちろん、武将たちの心情に胸打たれる

時代小説ってこんなにおもしろいんだ! 戦国時代とミステリーをかけ合わせた結果、より上質なミステリー小説ができあがったという感じ。 時代ものが苦手で読むのをためらっていたけど、こんなことならもっと早くに読むんだった。 今までの米澤穂信作品とは一…

『同志少女よ、敵を撃て』 女性狙撃手が激烈な戦場を駆け抜ける 苦悩、迷い、覚悟、そして撃つべき敵とは

いつも同じセリフで芸がないが、今回も おもしろかった! 途中、長いな・・・と一瞬思ったが、それはそれとして、読後の後味がいい(読んでよかった!と思える)一冊だった。 戦争から得られるものは何もないが、命を賭けて戦った女性兵士のその後までが描か…

『未来いそっぷ』 ひとつひとつがピリッとしてキラキラ輝いている短編集 クリスマス・イブのちょっといい話

いいね、いいね、こういう話。 ほっとする。 SFなんだけど情緒的というか、オチも微笑ましい。 最後にひっくり返されるんじゃないかとハラハラしながら読んだけど、邪推だった。 これぞ、クリスマス・イブに読むとほっとする話。 『未来いそっぷ』 星新一 あ…

『旅の窓』 世界を旅した沢木耕太郎が切り取った風景 どんな環境でも人は飄々と生きている

写真を一枚一枚、ゆっくり眺める。 たまにはこんな時間があってもいいよね。 文字に頼らず、見たまま感じる。 そのあと、作者の思いを読んで、あーそうかと思いを馳せる。 同感!だったり、そうなの?だったり、思わずにやりとしたり。 『旅の窓』 沢木耕太…

『夫婦茶碗』 ストーリーは二の次、突き抜けたダメっぷりが潔くて気持ちいい

いいねー、この駆け抜けるダメっぷり。 過激で、狂気と紙一重な狂いっぷり、開き直りっぷりもいい。 ここまで正々堂々と、いい加減っぷり、ダメっぷりを描きあげた町田康はすごいよもぉ。 読みながら、思わず何度も声を出して笑っちゃったよ。 『夫婦茶碗』 …

『EVIL 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』 落とし物が心臓なんて怖すぎるけど軽く読めるホラー

背筋ぞくぞくのホラーと思いきや、意外と軽い読み物だった。 でも、落とし物が心臓、なんて怖すぎる。 持って歩く人も怖いけど、中身を確認するお巡りさんはもっと大変。 くわばらくわばら。 『EVIL 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』 内藤了 あらすじ 警察…

『幽霊人命救助隊』 天国に行くため幽霊が100人の命を救う、コミカルに描かれた世界に読後は清々しい気持ちになれる

自殺という重いテーマをコミカルに描き、それでいて命というものに真摯に向き合っている作者の心意気を感じた。 ひとつの作品にこんなにたくさんの自殺志願者が登場することは、そうそうない。 それなのに、読後はさっぱり、清々しささえ感じるから不思議。 …

『銀齢の果て』 筒井康隆が高齢社会と介護制度に物申す、エンタメであると同時に考えさせられる物語

なんと恐ろしい設定。 老人が老人を殺し合う。 そんな話を堂々と小説にしてしまう筒井康隆に、あっぱれ! 筒井康隆にしか書けない小説だ。 『銀齢の果て』 筒井康隆 あらすじ 日本の高齢者人口は爆発的に増大し、若者1人が高齢者7人を養う社会になった。若者…

『君たちに明日はない』 濃いキャラと心地いいテンポで展開されるストーリーはさすがだね

よくもまあこんなに濃いキャラの人物を投入できるものだ。 それも、次から次へと。 クビ切る方も切られる方も、みんな憎めない。 好きだなぁ。 『君たちに明日はない』 垣根涼介 相変わらず、垣根涼介はエロい。 訂正、垣根涼介の書く小説のごく一部がエロい…

『超短編! 大どんでん返し』 すきま時間に読むのにぴったり、お気に入りの作家を見つけるも良し

全30編! 30人の作家が書いた2000字のどんでん返しが1冊につまっている。 なんとお得な! 『超短編! 大どんでん返し』 小学館文庫編集部編 何といっても30人だからね。30人。 いくら「超短編」といっても、これだけの作家の作品を一度に読めるなんて、何と…

『善医の罪』 久坂部羊 / 延命治療と尊厳死を考える

難しい問題だ。 本を一冊読んだくらいで結論が出るものでもなく、普段から自分の最期を考えておくべきだと思わされた。 くも膜下出血で救急搬送された横川達男は、一命をとりとめたものの意識はもどらず、自発呼吸も不十分だった。主治医の白石ルネはこれ以…

『黒い家』 貴志祐介 / 怖い怖い世界と人間の本質

怖いよ怖い。 誰もいない部屋、電気を消して横になる。 耳をそばだてると、微かに音がする。 きゃあーーーーッ! 『黒い家』は第4回ホラー小説大賞受賞作らしい。知らなかった。 昼休み、Kindle Unlimitedで無料で読める本作を見つけ、読み始めた。 あれよあ…

『カーテンコール!』 加納朋子 / 耐えられないと思ったら逃げていいんだよ

逃げてもいいんだよ。 助けて、といっていいんだよ。 いわた書店の一万円選書、ラスト3の1冊。 閉校が決まった萌木女学園大学で、単位を落とし卒業できなくなった学生たち。なぜ授業に出席できなかったのか。その原因はそれぞれが抱える生きにくさにあった。…

『ハロー・ワールド』 藤井太洋 / 国境を感じさせない物語

プログラム書く人には、国境なんてないんだ。 『ハロー・ワールド』の世界は難しい。 けど、なんとなくわかる! 楽しめちゃう! 本作にはタイトルの「ハロー・ワールド」の他に4つの短編が収められている。 自称「何でも屋」のエンジニア、文椎泰洋(ふづい…

『やがて訪れる春のために』 はらだみずき / 次の世代を生きるものにバトンを渡せ!

「ハルばあ」から「まめ子」にバトンは渡った。 これでいいんだよ。 真芽(まめ子)は小学校を卒業するまで両親と弟と祖父母の6人暮らしだった。手狭になった家を建て替えるというとき、両親と祖父母の間で何らかの問題が生じ、真芽ら4人は祖父母を残して街…

『玩具修理者』 小林泰三 / 途中下車できない気持ち悪さ

気色悪い。吐きそう。 でも気になる。 最後まで読んでしまう。 好きかも、こういうの。 『玩具修理者』は「玩具修理者」と「酔歩する男」の2つの短編が収録されている。 壊れたものなら何でも直してくれる玩具修理者。その名の通り玩具でも、死んだ猫でも。…

『午前三時のルースター』 垣根涼介 / それはないよ、その展開は受け入れ難い

それはないよ。 それじゃあんまりだよ。少年はどうすればいいの? そういうの好きじゃない。 旅行代理店で働く長瀬は、得意先の宝石店社長から16歳の孫・慎一郎のベトナム旅行に付き添ってほしいと頼まれる。慎一郎の父親は4年前ベトナムの工場視察に行った…

『ワイルド・ソウル』 垣根涼介 / 自由になりたかった男たち

みんな自由になりたかったんだよ。 それぞれ形は違うけど、最後は解放されてよかった。 これ、岩田書店の一万円選書で選んでもらった一冊(上下で二冊)なんだけど、岩田社長、私の好みをドンピシャ射抜いてくれた。 好きだな〜こういうの。大好き。 エンタ…

『オービタル・クラウド』 藤井太洋 / 壮大なスケールと世界観は世界級

これ、日本の小説?! やるじゃん、日本! やるじゃん、藤井太洋! 日本にもこんな小説あったんだーッ! 『オービタル・クラウド』は、流れ星予報サービスのサイトを運営する主人公が、何者かが仕掛けた宇宙テロに挑む話だ。 まず何といってもスケールがデカ…

『怒涛の砂漠』 渡辺裕之 / 疾走感がヤバい、息切れ寸前!

ふーーーッ、走ったなぁー。 久しぶりの全力疾走、この爽快感! あ、走ったの私じゃないよ、わかってると思うけど。私はリベンジャーズの面々の背後霊、もとい守護霊の如く、遅れないように彼らの背中に乗っかってただけ。 リベンジャーズ。自分たちの信じる…

『慈雨』 柚月裕子 / 物語のラスト、元刑事に降り注ぐ雨は優しかった

なるほど、そういうことね。 物語はここまで。この先は想像に任せるってことね。 定年退職した元刑事が妻と四国お遍路さんの旅に出る。旅先の宿で知った少女誘拐事件が、16年前に自分が手がけた少女誘拐事件と酷似していることに気づいた主人公は、後輩を通…

『きのうのオレンジ』 藤岡陽子 / 読後は空を見上げたくなる清々しさ

これ、絶対ヤバいやつ。 絶対ヤバい。 涙腺崩壊するやつじゃん絶対。 と思って読んだけど、大丈夫だった。緩みかけたけど。 『きのうのオレンジ』は、若くしてがんを宣告された男性と、彼を支える家族の話だ。 聞いただけで重くなりそうだけど、読後は意外に…

『茗荷谷の猫』 木内昇 / 人の生き様から自分の生き方を見つめる

『茗荷谷(みょうがだに)の猫』は9つの短編からなる連作である。 連作はいくつか読んだことがあるが、それはたいてい同じ時間軸で繰り広げられる物語の集まりだった。 しかしこの『茗荷谷の猫』は、江戸時代から昭和30年代までの長い時間の流れの中で、日常…