『クリスマス・キャロル』 がめつくて嫌われ者だった男が精霊とともに現在・過去・未来を旅し最後は幸せになる話 メリークリスマス!
これぞ、クリスマス!
気持ちがいいほどクリスマス!
人、物、景色がキラキラ光って見える。
我が身を振り返りつつ、読後は幸せな気分に浸れる一冊だ。
メリークリスマス!!
『クリスマス・キャロル』 チャールズ・ディケンズ
あらすじ
がめつくて嫌われ者のスクルージは、人々がクリスマスを祝うことに嫌悪していた。そんな時、7年も前に死んだ共同経営者マーリーの幽霊が現れる。マーリーの幽霊は、これから3人の精霊がスクルージのもとを訪れると言い残して消えてしまった。精霊たちはスクルージを過去、現在、未来の世界に誘う。子どもの頃を思い出し、未来の自分の姿を目にしたスクルージは改心し、皆の幸せを願い、ひとしきり笑ったのだった。
感想とか
いいね、こういう話。
ファンタジーと寓話がミックスされて、大人が読んでも心が洗われる。
子どもの頃は真っ白でシミひとつなかったはずなのに、成長するにつれ(多かれ少なかれ)いつの間にかどす黒くて意地汚くなっていく人々。というか私。
さすがにスクルージまではいかないけど、本作を読んで子どもの頃を思い出し、今を見つめ直し、これからを生きていこうと思った。大袈裟な話じゃなく。
キリスト教徒ではないので信仰からクリスマスを祝うことはないが、家族や周りの人を敬い、慈しむ気持ちを大事にしたいね。
この物語が流行る前、イギリスでは家族でクリスマスを祝う習慣が廃れ始めていたらしい(訳者あとがきによる)。それが『クリスマス・キャロル』がヒットして、その習慣が復活したのだとか。
恐るべしディケンズ。世界中でクリスマスが祝われる原点になったのだから。すごいとしかいいようがない。
そのディケンズ、描写力がまた素晴らしい。
街や風景がキラキラと光るように、現実味を帯びて読者の前に現れる。クリスマスの飾り付けやご馳走の描写もたまらない。クリスマスを待ち侘びる人々の姿も、思わず笑みがこぼれるほど見事に描かれている。
病や悲しみも伝染するが、笑いと上機嫌ほど人にうつりやすいものも、この世にひとつとしてない。
ほんと、そうだよね。笑いはすべてに勝つ。最強の武器。自分にとっても他人にとっても。
なんてことを、つらつら考えながら読了したのであった。