行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『クリスマスの思い出』 僕と親友が最後に過ごしたクリスマス 温かく清々しいけど物悲しい

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ハッピークリスマス〜!! と心うきうきする話ではない。

年が離れていても、こんな風にいっしょに暮らせるのっていいなと思ったけど、最後はやっぱり悲しかった。

ちょっとほろ苦、クリスマスの思い出話だった。

『クリスマスの思い出』 トルーマン・カポーティ

あらすじ

7才の僕と60才を越した我が友、そして一匹の犬が揃って過ごした最後のクリスマス。ふたりは腕を振るってフルーツケーキを作り、山で切ってきたツリーの木を飾り、プレゼントを交換しあう。永遠に続くかと思われたふたりの生活は、やがて僕が寄宿学校に入ったことで終わりを迎える。僕が20年以上昔のクリスマスを思い出して語る物語。

感想とか

『クリスマスの思い出』の何がいいって、絵がいい。

絵というか、銅版画。

本作には、山本容子の彩色銅版画が20点も収録されている。

カポーティの文章ももちろん綺麗でスッと入ってくるが、淡くて何ともいえない色合いの銅版画が私の琴線にふれて心がさわさわする。

20年以上昔の、我が友と過ごしたクリスマスを思い出す僕(バディー)の心の中を、そっと覗かせてもらってるみたいな不思議な感覚。

これがあの『冷血』のカポーティ? 

訳者・村上春樹のあとがき(『クリスマスの思い出』のためのノート)によると、カポーティの作品には「イノセント・ストーリー」と呼ぶことができるいくつかの短編小説があるらしく、本作はその中の代表作だとか。

天真爛漫、無邪気、純真、読んでるこっちがはずかしくなるくらい真っ直ぐ、そんな言葉がピッタリのふたりの物語。ちょっと意地悪な親戚も登場するけど、いかにも「イノセント・ストーリー」だなと思った。

クリスマスに読むにはちょっと悲しいエンディングだけどね。