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『カタリーナ・コード』 ヨルン・リーエル・ホルスト / 地道な捜査と犯人の心理に迫ったミステリー

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いやーおもしろかった!

24年前に女性が失踪した事件(カタリーナ事件)を追う警部の話。

ミステリーによくあるこれ見よがしの謎解きもなく、奇想天外な結末でもなく、すとんと落ちる読後感が気持ちいい。

ミステリーは今まであまり読んでこなかったのであくまで個人的な感想だけれど、ミステリーには進行に沿って多くの伏線が張られ、最後にドーンと回収して解決!みたいなイメージがあった。

読者を巻き込んで(読者もいっしょに推理して)物語が進み、ラストに主人公が謎を解決して終わり。チャンチャン。

っていうのがどうも好きになれなくて、今までミステリーは読んでこなかった。

だって、わざとらしくない?

設定に無理があったり、強引な展開とか関係性とか、書き手(作家)の手の内がわかっちゃうと興醒めするし。

最後までわからんかったー!ってなかなかない。叙述ミステリー、どんでん返し系でおもしろいのはあるにはあるが。

というミステリーには懐疑的な私だけれど、この『カタリーナ・コード』は、今まで読んできたミステリーと違い、謎解きがメインでなかった点が新鮮だった。

物語後半から、少しずつ真相に近づいていくのだけれど、伏線としてそのまま最後まで回収しないのではなく、その都度回収しているところがいい。

現実社会で警察が事件を解決する過程は、『カタリーナ・コード』のようにひとつひとつの捜査の積み重ねがあり、少しずつ真相が明らかになっていくわけで(多分)、ある日突然、天から降ってわいたようなひらめきで解決に至るわけでは決してない(はず)。

だから、よりリアルな展開、派手な演出がない代わりに地道な捜査で真相に迫る書き方に座布団一枚!

犯人がわかりました、がオチではなく、犯人の心の移ろいに焦点を当て、最後に犯人の苦しみも垣間見せるオチとなっている点にも一枚!

犯人が事件から24年間どんな心境で過ごしてきたか、今どんな気持ちでいるかをヴィスティングとの会話や距離感で伝わってきた。

もうひとつ特筆すべき点は、『カタリーナ・コード』には登場人物同士のせめぎ合いがない。

例えば、エリート警察官 vs 地方警察官、警察 vs メディア(新聞やTV)など、警察小説でよくある人間関係の対立が一切ない。あっぱれというくらいない。

ここで主人公・ヴィスティング(ラルヴィク警察警部)とスティレル(国家犯罪捜査局捜査官)が対立して腹を探り合うんだろうなと思いきや、普通に協力して捜査にあたる。あれ?

ティレルは新聞社やテレビ局を捜査に利用したわけだけど、リーネ(ジャーナリスト)を邪険にするでもなく、現場を取材させている。へぇそうなの?

って感じで、いい意味で私の期待を裏切った。


作者ヨルン・リーエル・ホルストノルウェーの作家で、元警察官だ。なるほど、だから警察小説かと納得。

北欧ミステリーはあまり邦訳されていないということもあり、ほとんど読んだことがなかった。

スティーグ・ラーソンのミレニアム(ラーソンが書いたのは1〜3までなので3まで)以来数年ぶりに読んだが、相変わらず人の名前が読みにくい。覚えにくい。誰だっけとわからなくなる。

そこで今回は簡単な相関図をメモしながら読んだ。これが意外に効果あり。次回からもこれでいこう!


そうそうそれと、ヴィスティングが久しぶりに帰ってくる息子のためにピザを焼くというシーンがある。

イーストを買い忘れていたとか、生地を発酵させて膨らむのを待つ間にトッピングの牛肉を炒めるとか、ノルウェー男子は普通にピザを焼くんだーと感心した。

日本だと何だろう、うどんそばパスタ?

でも生地からは作らないから、何とか丼かな??