行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『オービタル・クラウド』 藤井太洋 / 壮大なスケールと世界観は世界級

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これ、日本の小説?!

やるじゃん、日本! やるじゃん、藤井太洋

日本にもこんな小説あったんだーッ!


『オービタル・クラウド』は、流れ星予報サービスのサイトを運営する主人公が、何者かが仕掛けた宇宙テロに挑む話だ。

まず何といってもスケールがデカい。とてつもなくデカい。

舞台は日本・東京、アメリカ・シアトル、イラン・テヘランセーシェル共和国(インド洋に浮かぶ島国)、ここまではまぁ普通。 これに宇宙空間が加わって、壮大なスペクタクルが繰り広げられる。

登場人物も世界級。

主人公はごく普通の若者(日本人)。もう一人、凄腕の IT エンジニアもごく普通の日本人の若者。

で、このふたり以外の登場人物が JAXA宇宙航空研究開発機構)、CIA、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)、アメリカ空軍などに所属するエキスパートたち。

日本のふたりの若者が、国家のために働くプロフェッショナルと一丸となって宇宙テロに立ち向かうという話なんだけど、嘘くさい?と思いきや超リアルなんだなこれが。

なぜか。

『オービタル・クラウド』で語られる IT や宇宙開発に関する分野の緻密な描写のおかげだ。

著者・藤井太洋は PC 用のグラフィックソフトウェアの開発責任者だった 。経験値からくる生々しい描写は説得力がありリアリティーにつながる。

では読者がその描写をすべて理解できるかというと、多分多くの文系読者は理解できない(だろう)。私もわからなかった。わからなかったけど、おもしろかった。最後まで楽しく読めた。最後は登場人物といっしょに空を見上げた。

わからなくてもわかった気にさせ、物語に引き込む著者の力量に脱帽。

そんなこんなの『オービタル・クラウド』は、スケールの大きさ、世界観、専門分野の描写、どれをとっても世界級の傑作といってまちがいない。


読了後思い出した。これ。

3年前に JAXA相模原キャンパスで食べたロケットカレー。今思うとお子様ランチ的なカレーをひとりで食べる姿はめちゃくちゃはずかしい。それに引き換え周りはグローバルな顔ぶれだったなぁ。 

一般人も入れる施設を見学もした。宇宙開発に懸ける技術者の思いを感じた貴重な時間だった。