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『午前三時のルースター』 垣根涼介 / それはないよ、その展開は受け入れ難い

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それはないよ。

それじゃあんまりだよ。少年はどうすればいいの?

そういうの好きじゃない。


旅行代理店で働く長瀬は、得意先の宝石店社長から16歳の孫・慎一郎のベトナム旅行に付き添ってほしいと頼まれる。慎一郎の父親は4年前ベトナムの工場視察に行ったきり行方不明になっていた。慎一郎は父親の消息を尋ねるため、長瀬とその知人・源内の3人でベトナムに向かう。現地で通訳と運転手を雇い捜索を始めようとするが、何者かに妨害を受け・・・という話。

『ワイルド・ソウル』がよかったので、同じく垣根涼介の『午前三時のルースター』をチョイス。こちらは垣根涼介のデビュー作だ。

確かにおもしろい。するすると入ってくる。初っ端から物語に引き込まれてしまう。気がついたらあっという間に第1章を読み終わっていた。

ベトナムのムンムンした熱気も伝わってくる。ねっとりした空気とか人いきれとか。

長瀬らをつけ回すのが誰なのか。ミステリー仕立てで躍動感もある。

うん、確かにおもしろい。

あ、念のために言っておくと、本作の主人公は慎一郎と思いきや、長瀬なのである。長瀬から見た慎一郎の人探しというわけ。

どうして慎一郎じゃなく長瀬なんだろう。慎一郎に突きつけられた現実を長瀬の目を通して描くことがこの物語の良さであり余韻を醸し出しているのかもしれない。

まぁそれはいいとして、結局、慎一郎に突きつけられた現実はあまりにも厳しくて、慎一郎だけが置いてきぼりを食らった感じの展開が最悪。少年の成長譚でもないのに、このラストは個人的には受け入れ難い。別にハッピーエンドを期待していたわけじゃないけど、何だかね。

解説で作家の川端裕人は「爽やかな読後感」と書いているが、私はそうは思わなかった。大人の身勝手さゆえの居心地の悪さというか。おもしろさが帳消しされちゃった感じ。

物語にすっかり入り込んでしまった私は、垣根涼介の思うつぼなのかもしれない。


『ワイルド・ソウル』にも車に関する詳しい描写があったけど、『午前三時のルースター』にもかなり細かい描写があった。車音痴の私にはチンプンカンプンだけど、垣根涼介はきっと大のカーマニアなんだろうな。