行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『玩具修理者』 小林泰三 / 途中下車できない気持ち悪さ

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気色悪い。吐きそう。

でも気になる。

最後まで読んでしまう。

好きかも、こういうの。


玩具修理者』は「玩具修理者」と「酔歩する男」の2つの短編が収録されている。

壊れたものなら何でも直してくれる玩具修理者。その名の通り玩具でも、死んだ猫でも。奇妙な文句を口ずさみながらすべてのパーツをバラバラにして、再度組み立て直す。ある暑い日、わたしは子守りをしていた弟を誤って死なせてしまった。わたしは弟を玩具修理者のところに持っていくことにした・・・という話。(玩具修理者

あるバーでわたしは自分のことを知っていると見知らぬ男から声をかけられる。その男は自分と親友だったと言うが、わたしにはまったく記憶がない。男を問い詰めると、ある女に関する奇妙な話を語り始める・・・という話。(酔歩する男)


「これを読む者は一度は精神に異常をきたす」という『ドグラ・マグラ』を評した一文を思い出した。

ドグラ・マグラ』で精神はやられなかったけど、本書、特に「酔歩する男」では危うくやられそうになった。

「酔歩する男」はタイムトラベルの話。タイムトラベルなんていうと呑気な話に聞こえるかもしれないが、実は想像を絶する気持ち悪さに襲われる。頭がおかしくなるくらい。

語られることを咀嚼すべく正面から読み込もうとすると多分頭がおかしくなる。意味不明なことだらけ。時間に関する感覚と概念が崩れ去り思考能力もやられる。


玩具修理者」はホラー小説だ。短編ゆえにムダのない描写で、とてもクリアに感じた。結末も必然で思わず頷いてしまったほど。

視覚的に気持ち悪くはあるが、余裕でついていける。というかこういうの好きかも。


今後、小林泰三の作品を読むべきか否か、迷う。おかしくはなりたくない。が気になる。