『ハロー・ワールド』 藤井太洋 / 国境を感じさせない物語
プログラム書く人には、国境なんてないんだ。
『ハロー・ワールド』の世界は難しい。
けど、なんとなくわかる! 楽しめちゃう!
本作にはタイトルの「ハロー・ワールド」の他に4つの短編が収められている。
自称「何でも屋」のエンジニア、文椎泰洋(ふづいやすひろ)が作った広告ブロックアプリが、突然インドネシアで売れ始めた。その理由を調べていくうちに、衝撃の事実が明らかになる・・・というのが「ハロー・ワールド」。
その他に、「行き先は特異点」「五色革命」「巨像の肩に乗って」「めぐみの雨が降る」があるんだけど、素人に一番わかりやすいのは「行き先は特異点」。
レンタカーでラスベガスに移動中だった泰洋は、グーグル・セルフドライビングカー(実験中の自動運転車)に追突され、加害者ジュディと警察の到着を待っている。現場はキャンプ場の中、建物も何もないところだったが、そこに次々とアマゾンの配送ドローンがやってきて荷物をおろしていく。ウーバーとテストカーもこちらに向かってくる。どうしてこんなことが起きる?・・・という話。
『ハロー・ワールド』には、アマゾン、ウーバー、ツイッター、フェイスブック、インスタ等々実在する会社や SNS なんかが登場したり、ドローンやブロックチェーンを応用した仮想通貨ビットコインやイーサリアムの話もあったして、ものすごくリアリティーがある。
IT関連の専門用語や言い回しがあったりして、ついていくのは結構しんどいけど、なんとかついていけたし楽しめた。
「めぐみの雨が降る」で、泰洋は仮想通貨<リヤン>(漢字一文字なんだけど変換できず)を作った。何のために<リヤン>を作ったのか、呉に尋ねられて泰洋はこう答える。
「僕は、世界とつながっていたいんです」
オフィスで顔つき合わせるリアルな会議。PC越しのWeb会議。
現実の世界でもネットの世界でも、エンジニアは国境を超えてつながっているんだなぁ。
泰洋は住む場所をひとところに定めず、東京 〜 ベトナム・ホーチミン 〜 中国・長春と、自在に移り住む。
『オービタル・クラウド』もそうだったけど、藤井太洋の書く小説には国境がない。
いいね、この世界観。