『初秋』 ロバート・B・パーカー / 男くささと力強さにやさしさをプラスした物語
思ったより新しくて読みやすかった。
なんといっても1988年発行だからね。
もっと古くさく感じると思ったよ。
ハードボイルドの名作と言われるロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズ。Wikiによると全40作もあるらしい。全部は邦訳されていないようだけど、邦訳分全制覇するのは至難の業だね。
村上春樹もパーカーのファンだとか。『ロング・グッドバイ』、『武器よさらば』からの『初秋』。長い旅だった。
私立探偵スペンサーはオフィスを訪れた女性から、元夫が連れ去った息子を連れ戻してほしいという依頼を受ける。依頼人と元夫は、お互いに相手を困らせるために息子ポールを奪い合っていた。元夫からポールを連れ戻したスペンサーは、心を閉ざし何事にも無関心なポールに危ういものを感じる。そこでスペンサーはポールが自立した生活を送れるよう鍛えることにする・・・という話。
タフでクールでマッチョな男スペンサーが主人公で、闇(悪)の世界に果敢に挑む場面もあり、『初秋』はハードボイルド小説にまちがいはないんだろうけど、なんかちょっと違う印象。
タフでクールでマッチョなスペンサーが、痩せっぽっちで無気力、無関心なポールを心身ともに自立した人間にするため、ハードな訓練(ランニングからボクシングに至るまで)、大工仕事、芸術鑑賞なんかで鍛え上げる物語なんだよ。芸術鑑賞で鍛えるって表現は微妙だけど。
男くさて力強いイメージのハードボイルド小説に、人と人の関わりや、やさしさ(大人になりきらない子どもへのやさしさ!)を盛り込んだ、ちょっと趣の異なるハードボイルド小説に仕上がっているじゃなかろうか。
スペンサーがポールにこんなことを言う。
「得意なものがなんであるか、ということより、なにか得意なものがあることの方が重要なんだ。おまえにはなにもない。なににも関心がない。だからおれは、おまえの体を鍛える、丈夫な体にする、十マイル走れるようにするし、自分の体重以上の重量が挙げられるようにする、ボクシングを教え込む・・・」
しびれるねぇ。
ところで、もし『初秋』を映画化するとしたら、っていうか、現に「私立探偵スペンサー」は過去にアメリカでテレビドラマ化されているけれど、今映画化するとしたら、主役は誰がいいかなぁと考えた。
数少ない映画鑑賞の歴史から、映えある主役に抜擢されたのは・・・・
ジェイソン・ステイサムさん! おめでとう!!
どうかな。いい線いってるよね?