『許されざる者』 レイフ・GW・ペーション/ 時効が成立した事件の犯人の末路
結局、そうなるのね・・・。
それにしても、やっぱり出てきた小児性愛、暴力、貧困、家庭崩壊。
スウェーデン(北欧)ミステリーにはつきものなのか?
国家犯罪捜査局の元長官ヨハンソン(67歳)は、屋台でホットドックを買った直後脳塞栓で倒れ、病院に救急搬送されたものの右半身に麻痺が残ってしまった。そんなヨハンソンに主治医がある相談を持ちかける。25年前、9歳の少女が殺され時効が成立した事件の犯人を、牧師をしていた父が知っていたというのだ。しかしその父は1年前に亡くなっている。ヨハンソンはリハビリを続けながら、親友や介護士、経理士らを使い情報を集め、とうとう犯人を見つけ出す。そして・・・という話。
時効を迎えてしまった事件の犯人は、その後のうのうと生き続けるのか。もしそうだとしたら、被害者、関係者の心中は計り知れない。ストーリーを追いつつ、そんなことを思いながら読み進めた。
思うに、『許されざる者』のテーマは正にそこにあるのだろう。
主人公ヨハンソンが時効を迎えた事件の犯人を見つけ出す。
見つけたとして、それで?
どうする? どうなる? 何ができる?・・・
犯人を見つけたヨハンソンのとった行動(選択)が本作の最大の見せ場になる。
・・・で、一周して冒頭の感想にたどり着く。
結局そうなるんだ、、、、。
各章の冒頭に、モーセ五書のひとつ「申命記」十九章二十一節が記載されている。
いかなる慈悲をも与えるな。
命には命を、目には目を、
歯には歯を、手には手を、
足には足を・・・
難しい問題だね。法律と感情。簡単には割り切れない。一生を背負っていくものだから。
ストーリー展開は犯人に向かって一直線って感じで、寄り道がなく気持ちがいい。
ヨハンソンの心情も、例えば会話で、口にした台詞の後に心の声をつぶやく形で書き足しているから、とてもわかりやすく軽快なテンポでこれまた気持ちがいい。
「なんてことだ」いったいどこからそんな発想がーー。
「お前さんはリスにそっくりだ」なぜわたしはそんなことを言うのだろうーー。
「リス?」
「その話はまた今夜にしよう」
って感じ。サクサクと読めるでしょ?
それにしても、また出たよ小児性愛。
ルースルンド&ヘルストレムの『制裁』、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』、数少ない既読のスウェーデンミステリーにも登場したキャラや設定。
日本の小説ではあまり見かけないような気がするが、私が知らないだけか?
『許されざる者』はギリギリセーフだが、あれ以上激しい描写はお断りしたい。