行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『黒い家』 貴志祐介 / 怖い怖い世界と人間の本質

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怖いよ怖い。

誰もいない部屋、電気を消して横になる。

耳をそばだてると、微かに音がする。

きゃあーーーーッ!


『黒い家』は第4回ホラー小説大賞受賞作らしい。知らなかった。

昼休み、Kindle Unlimitedで無料で読める本作を見つけ、読み始めた。

あれよあれよという間に『黒い家』の世界に引きずり込まれ、気がついた時は冷や汗じっとり、続きが気になって帰宅後一気読みした。


主人公の若槻慎二は、生命保険会社で保険金の支払い業務を担当している。ある日、自殺をほのめかす奇妙な電話がかかり若槻が対応した。その後、顧客から家に来るよう呼び出された若槻は、その家に住む子どもの首吊り死体を発見する。子どもには生命保険がかけられており、両親は保険金を請求するものの、死体発見時の父親の不審な態度から若槻は他殺を疑う。警察の捜査もなかなか進まず、若槻は独自で調査することになり・・・という話。


もうね、これはホラーだよ、ホラー。

ホラー大賞受賞なんだからホラーに決まってるじゃん、って声が聞こえそうだけど、読む前は知らなかったんだから。

確かに、Kindleの画面(上部)には、黒い家(ホラー文庫)と書いてあるけど、めちゃくちゃに怖いなんて思わないでしょ。

しーんとした部屋で物音がするとビクッとなるあの感じ、わかる?

今はあの状態。

すごくリアルで、展開が早い。緊迫感もあり、思わず後ろを振り返ってしまう恐ろしさ。

リアルで思い出したことがある。

ずっと昔、貴志祐介の何だったかなぁ、確か『青の炎』だったと思うけど、リアルすぎて読めなかったことがある。

とにかくリアルなんだよ。リアルの度合いが私の物差しとシンクロするというか、なんというか。

結局『青の炎』は最初の数ページを読んだだけでギブアップ、棄権した。

新世界より』も、買ったものの何年も積読状態。怖くて手に取れない。

余裕がないと向かえない作家なのかもしれない。


犯人はサイコパスなのか否か。

世の中には猟奇的な殺人を犯す人間がいるけど、若槻の彼女・恵に言わせれば、「生まれつき邪悪な人間なんていない」らしい。

「子供っていうのは、自分が扱われたのと同じやり方で、世間に対処しようとするのよ。あの人は、きっと物心つく前から、ああいう扱いを受け続けてきたんだわ。だから、そういう生き方しかできなかった。まわりには誰も、人を傷つけたり殺したりするのが悪いことだって教えてくれる人がいなかったんだと思う」

前回読んだ『初秋』のポールと同じだね。ポールがあのまま成長して大人になると、程度こそ違うけど、親と同じような生き方をするようになる。

ホラーといえども深いね。

深いといえば、最後の方で日本社会について考察しているところがある。

拝金主義、社会的弱者への思いやりの欠如などモラルの崩壊、農薬や食品添加物などの環境汚染、犯罪、高齢社会、財政破綻などなど、作者の思いが込められている。深いね。


というわけで、昼休みの暇つぶしに読んでみた本が異常に怖くて、意外とハマったかも、という話でしたとさ。なんか変。