行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『武器よさらば』 ヘミングウェイ / 行動を描くことで心情を読み取らせる

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そうかー。そういうことね。

余韻がね。


意味不明な読後の一言。

でも、それしかいえない。とにかくそういうことだ。


第一次世界大戦中、イタリアの傷病兵搬送車部隊に所属するアメリカ人フレドリックは、任務中に敵の砲撃を浴び重傷を負う。病院に運ばれたフレドリックは、前線に赴く前に親しくしていたキャサリンと再会し恋に落ちた。しかし傷が癒えたフレドリックは再度前線に呼び戻される。戦況が悪化し部下とともに撤退するフレドリックだったが、橋のたもとで野戦憲兵隊に引っ立てられ殺されそうになる。命からがら脱走するフレドリック。キャサリンを見つけ出し、ボートでスイスへと逃げるが・・・、という話。


こうやってあらすじを書くと、ドラマチックなストーリーのように思えるが、実はそんなことはない。

読んでいてハラハラするところはないし(全くないわけではない、ボートでスイスに逃げるところはそれなりに迫ってくるものはあった)、燃え上がるラブストーリーのようにドキドキすることもない。

なぜって、とにかくさらっと、どちらかというと淡白すぎるくらい簡素な文体で描写されているから。

危機的な戦況。危うい恋愛感情。そういったものを表現するのに、ヘミングウェイは心理描写をわざと排除し、事実や行動のみを淡々と描写することで、登場人物の心情を読者に読み取らせようとしている。と思われる。あくまで私見だが。

ロング・グッドバイ』の解説で村上春樹がいっていたことがわかったような気がする。

フレドリックの不安や焦燥感を直接語らず、代わりに彼の行動(何を食べたか、何を見たかなど)を緻密に描く。それを読むことで読者は彼がいかに追いつめられているかを理解する。

武器よさらば』のラストシーンはまさにそれだ。

提示されていないフレドリックの心情がありありと感じられ、最後に胸を打たれた。


とはいうものの、私はどちらかというと、人間の心理をぐりぐりとえぐるものやジェットコースターのようなスリル満点のストーリー、はたまた登場人物に感情移入できるものが好きなので、『武器よさらば』はあまり好みではない。すまぬヘミングウェイ

ヘミングウェイの作品には『武器よさらば』の他、『日はまた昇る』『誰がために鐘は鳴る』『老人と海』など名作がたくさんあるが、うーん、もう読まないかな。

老人と海』は読んだ。主人公の老いた漁夫が大きな獲物(カジキだったか?)を仕留めたが、漁港にたどり着くまでに獲物をサメに食い尽くされていた・・・という話だったと思う。

あれも簡潔な文体だったんだろうか。覚えがない。

一読後は何がいいたかったのか全くわからなかったが、今再読すると新しい発見があるかもしれない。


それにしても、久しぶりに新潮文庫を読んだが、やっぱり新潮文庫は読みやすい。

印字が濃い。太いというべきか? とにかく目に優しい。

ハヤカワ文庫は若干字が薄く感じる。ちょっと読みにくい。

創元推理文庫は明らかに字が小さい。読みにくい。読めるけど。