行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『カーテンコール!』 加納朋子 / 耐えられないと思ったら逃げていいんだよ

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逃げてもいいんだよ。

助けて、といっていいんだよ。


いわた書店の一万円選書、ラスト3の1冊。

閉校が決まった萌木女学園大学で、単位を落とし卒業できなくなった学生たち。なぜ授業に出席できなかったのか。その原因はそれぞれが抱える生きにくさにあった。角田理事長は彼女たちに半年間の特別補講合宿を提案し、厳しい共同生活を経てエールを贈る・・・という話。


そう、何を隠そう青春小説。6つの短編が連作になっている。

青春だよ青春。

青春とははるか遠くの幻想かな by sora、なんちゃって。

この年になって青春小説読んでもねぇ。

ということでなかなか手が出なかった1冊だったけど、よかったよ。

何がよかったって、角田理事長の学生に贈る言葉がよかった。

6つの短編のうち5作品は悩む学生から見た世界。残る1作品は悩む者の周りにいた人物(角田理事長)から見た世界。

若者の(年齢関係なく人の)生きにくさは正直いってよくわかってるつもり。現実に自分の周りでもあるし、小説の世界でもよく取り上げられるテーマだから。

だから5作目までは想像通り、どちらかというと上っ面だけ撫でた軽い小説だなと思っていた。

が、ラスト1作「ワンダフル・フラワーズ」の角田理事長の回想シーンには胸がつまるものがあった。

嫁いだ姉と、目の前の世間でいうところの落ちこぼれの学生たちを重ね合わせ、理事長はこう声をかける。

もう駄目だ、耐えられないと思った時、自分の足で逃げられる力を、今のうちに育てて下さい。そして、自分の言葉で、直接『助けて』と言える人を探して下さい。我と我が身を救うための、知恵と勇気を身につけて下さい。

生きにくいのは自分だけじゃない。ほらここにも、あこにも、同じように悩んでいる人がいる。気づいてほしい。助けてと声を出して。・・・っていってる気がした。

若者の諸君! 『カーテン・コール』を読んでみてほしい。


ちなみに、巻末の解説はいわた書店の岩田徹さんが書いている。

父親から引き継いだ書店のこと。一万円選書のこと。

そして岩田さんから読者へパスする言葉。

ぜひぜひ読んでみてほしい。今の時期だからこそ胸に響くものがあるはずだ。