『十日間の不思議』 ラストそうきたか!大どんでん返しのミステリー
さあさあ、ジェットコースターに乗ろう!
上りはスロー。てっぺんまでいったら徐々に加速して一気に駆け下りる。
小さい山をいくつか乗り越え、はぁ〜やっとゴールにたどり着いた。
と思ったら、なんとそこから真下に突き落とされる。
どういうこと?
そんな感じのミステリー小説だった。
『十日間の不思議』(新訳版) エラリイ・クイーン
初エラリイ・クイーンだった。
今さらエラリイ・クイーン読んでもねってずっと思っていたんだけど、本作の新訳版を書店で見かけて即買いした。
作家で探偵のエラリイ・クイーンは、旧友ハワードの訪問を受ける。ハワードはたびたび一時的な記憶喪失の発作に襲われ、記憶がない間に自分がとんでもないことをしているのではないかと恐怖に怯えていた。エラリイを訪ねたときも、喧嘩をしたかのように顔は腫れあがり、上着には血の塊がついていた。ハワードからいっしょに家に来て自分を見張っていてほしいと懇願されたエラリイは、頼みを聞き入れハワードの住むライツヴィルに赴く。屋敷にはハワードの父ディードリッチと継母にあたるサリー、叔父のウルファートが住んでいた。そこでエラリイは秘密を打ち明けられ、次第に面倒なことに巻き込まれていく・・・という話。
本作は第一部と第二部に分かれている。第一部は「九日間の不思議」一日目〜九日目、第二部は「十日目の不思議」十日目。
一日目と二日目が助走、ジェットコースターに例えると上り。正直ちょっとつまらないと思ってしまった。
ところが三日目から一気に加速する。
エラリイに秘密を打ち明けたのは誰? 秘密とはどんな?
そして嘘の上塗り、抜き差しならない状況、次に何が起きる? 犯人は?
ジェットコースターは勢いよく走り続ける。
九日目でゴールが見えてきた。なるほどそういうことね。
と思ったのも束の間。
十日目、どんでん返しもどんでん返し、大どんでん返しが待っていた。
ここがゴールじゃなかったの? 足元の床が抜け、真っ逆さまに落ちていく感じ。
未読の人は何のこっちゃって感じだろうけど、読めば納得、十日目のための九日間であり、すべてが十日間に凝縮されている。やられた感半端ない。
残念だった点がひとつ。
読者である私に聖書の知識がなかったこと。
作中至るところに聖書の言葉が引用されている。聖書に詳しければ本作をもっと深く味わえただろう。
その点を除けば『十日間の不思議』はとても読みやすい作品で、一気読み可能な一冊だ。ちなみに私は半日で読了した。
『十日間の不思議』はエラリイ・クイーンの円熟期の四部作になるらしい。(ハヤカワ文庫の帯曰く)
そうなんだ。有名な悲劇シリーズはそれより前の作品ってことね。これを機に読んでみる?
うーんどうしよう。迷う。