行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『解錠師』 声を失った少年が絵を描くことで心を通わせる姿は神秘的ですらある

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ごめん、乗り遅れたみたい。

ストーリーには完全に乗り遅れた。

でも。

声をなくした少年が、絵で伝えようとする姿は美しかった。

『解錠師』 スティーヴ・ハミルトン

ある事件がきっかけで声が出なくなってしまった8歳の小年。

解錠という能力を持ったばかりに、抗いがたい力でもって犯罪者という運命を背負わされてしまった・・・。

簡単にいうとそんな話なんだけど、最初にも書いた通り、ストーリーに乗り遅れてしまった。

どこから乗り遅れたのか、今となっては定かではないが、完全に乗り遅れて気がついたらラスト2章。

うーん、これって・・・。


物語は、8歳の時に起きた悲惨な事件の後、少年が伯父と暮らし始めて解錠師になるまでの話と、その後少年が泥棒たちと組んでピッキングや金庫破りをする話が並行して語られる。

最初は完全に別々の時間軸で語られてるんだけど、徐々に二本の線が近づき、最後に交わる。そこがある意味山場だと思うんだけど、なんだかよくわからんってのが正直な感想。

わざわざ時間を行き来して描いた効果はあったのだろうか。

さんざんアナログの金庫の鍵を開けてきたのに、最後の金庫は電子キー? 開けられませんって? それはないよね、とか。


とはいえ、声をなくしたマイクルが、言葉の代わりに絵を描くことで気持ちを伝えようとし、アメリアと心を通わせていくところはとてもいい。

特に、かつてマイクルが住んでいた家、悲惨な事件が起きた家で、マイクルとアメリアが言葉抜きに、壁一面に絵を描くことであの日何が起きたのかを伝えあうシーンは、切なくて神秘的ですらある。


解錠師というだけあって、鍵を開けるシーンがたくさん出てくる。解錠師になるための修行の場面も。

でも、個人的にピッキングや解錠には興味がないので、解錠シーンがリアルなのかどうかわからない。読んでいて薄っぺらくは感じないので多分リアルで、それなりに緊張感あふれるシーンなのだろう。あくまで想像。


文庫本のカバーに「アメリカ探偵作家クラブ賞受賞」「英国推理作家協会賞受賞」、帯に「このミス海外編 第1位」「週刊文春ミステリーベスト10海外部門 第1位」とある。

ミステリーのつもりで読むと、もしかしたらずっこけるかもしれない。と思って読むのがいいのかもしれない。

書評や口コミは100%ではない。

というのが本作を読んでの感想であった。おしまい。