『青い城』 空想上のお城が現実となるマンガチックなラブストーリー
『青い城』 モンゴメリ / 谷口由美子訳 を読みました。
ハッピーエンドは予想していましたが、思いがけないどんでん返しがあり、ラストは一気読みでした。とはいっても、全体を通して意外性はなく、落ち着くところに落ち着いたストーリーだったかなと思います。
冒頭はヴァランシーの卑屈(と私には思えました)な心情や受け答えにイライラし、物語の中盤は正直いって中だるみを感じましたが、ラスト60ページのどんでん返しに次ぐどんでん返しで伏線回収!みたいな着地は見事でした。
現実逃避を続けるヴァランシーが創り上げたお城(青い城)が、紆余曲折を経て本物の喜びと愛に満ちたお城(青い城)になりましたとさ、という話はどこか少女マンガ的で、これが評価の分かれ目になると思います。好き嫌いが分かれるというか。
個人的にはもっとドロドロした小説が好みなので、ちょっと物足りなくはあります。でもこれがモンゴメリの作風なのでしょう多分。
それにしても、母親や親戚がいつも自分の周りにいて、結婚はまだかとか、自分の言動にいちいち口を出されるのは本当にうんざりしますよね。そんなしがらみから逃れ、自由奔放に生きたいと願ったヴァランシーの気持ちはよくわかります。
吹っ切れた後のヴァランシーの言い草がとてもユーモラスかつ辛辣で、ストーリーの本筋からは外れますが、その部分が一番おもしろくて楽しめました。