『パルプ』 自称名探偵が奇妙な依頼を次々解決、ぶっ飛びすぎ、でも嫌いじゃない
何だろう、ストーリーははちゃめちゃ、ハードボイルドなんだか、ミステリーなんだか。
読みたくて読んだはずだけど、大きく外れた。
野球でいうなら暴投、ワイルドピッチ。
でも、ハズレでも、まいっか、と思えてしまうのはどうしてだろう。
不思議だ。
『パルプ』 チャールズ・ブコウスキー
あらすじ
自称名探偵ニック・ビレーンは競馬が趣味で飲んだくれ。ある日、死の貴婦人(レイディ・デス)と名乗る女性から、死んだはずの作家セリーヌを探してほしいと依頼を受ける。一時間6ドルで依頼を受けたビレーンは早速調査に乗り出す。翌日には、存在するかどうかもわからない赤い雀を探してほしいと、別の人物から依頼を受ける。その後も奇妙な依頼が続き、ビレーンは事件に巻き込まれていく。死神、宇宙人に助けられながら、最後はすべての事件を解決するが・・・。
感想とか
ビレーンの人生観がぶっ飛んでいる。
その日暮らしのやりたい放題。言いたいことを言って、やりたいことをやる。他人の目なんか気にせず、だらだらと、あくまで冷静に自己中。口にする言葉、頭の中も下品極まりない。
ここまで自堕落で好きなように生きられたら楽だろうなぁ。
ストーリーもぶっ飛んでいる。
死神が出てきて、死んだ作家を探せだと? ありもしない赤い雀を探せだと? 宇宙からやってきた侵略部隊だと? ありえない。
無理くりストーリーをつなげているような気もするけど、全然気にならない。
文章もぶっ飛んでいる。文章というか文体?
過激で支離滅裂な言葉。バカバカしくて何の脈絡もない展開。会話は下品でシニカル。
もお、何から何まで衝撃的なんだけど、嫌いじゃない。
でも余裕のあるときに読まないと、やられる、多分。
ぶっ飛びのビレーンだけど、何をやってもパッとしない、理不尽なことなばかり起きて、思うようにいかない人生を受け入れて、自分なりに生きてきたのに、最後はこれ?ってところが切ない。
文庫本の帯にあった高橋源一郎の言葉。「日本翻訳史上最高傑作」かどうかはわからないけど、「僕の文章の理想像」ってのはわかるような。雰囲気が似てる気がする。