行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

『第五の季節』 パズルのピースがひとつずつはまっていく感じがたまらない(でもそれは最後の最後)

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このラストはずるいぞ。ずるすぎる。

続きが気になるじゃないか。

細かいことはよくわからんけど、どうしようもなく気になるんだよ。

『第五の季節』 N・K・ジェミシン

いやほんと、続きが気になって、感想を書く時間が惜しいくらいだ。

だけどいつか、『第五の季節』を読んだことをすっかり忘れてしまうときがくるかもしれないから、ここはぐっとこらえて感想だけは書こうと思う。


数百年ごとに「第五の季節」と呼ばれる壊滅的な天変地異が訪れる世界。超大陸スティルネスを支配するサンゼ人は、熱や運動などのエネルギーを操る能力を持つ人々・オロジェンを訓練し従わせることで隆盛を誇ってきた。オロジェンはその能力ゆえに憎まれ、虐殺の対象となってきた。そんな中、42歳のエッスンは夫に息子を殴り殺される。夫はエッスンの娘も連れ去った。生死のわからない娘を連れ戻すためエッスンは旅に出る・・・・という話。


私はもともとSF小説が苦手だ。奇想天外、ありえない設定、わかりもしない(まったく見えない)将来のことを想像して書くのだから、作家の独りよがりと言われても仕方ない、くらいに思っていた。

だが最近、見方が変わってきた。何も考えずに、作者に導かれるまま物語の世界に身を委ねると、見えてくるものがあるのだと。

この「何も考えずに」というところが重要。

とりあえずポーンと放り込まれた世界で、ゆらゆらと漂っているうちに、めちゃくちゃおもしろいことに遭遇するわけだ。

この『第五の季節』も同じ。

よく考えると、設定がありえない。

時代はいつ? 人以外の登場人物(人物といっていいのか?)は一体何者? オロジェン(造山能力者)? 石食い? 守護者? ???

オロジェンが持つ能力も、いってみれば超能力で、普通はありえない。地球に通じるとか、岩を動かすとか、何もかもおかしい。

でも、それが薄っぺらく思えないから不思議だ。

読んでいて我に返ることも一度もなかった。先へ先へと、常に意識は物語の先を求めていた。

これだけ壮大な物語が破綻せず成り立っているのは、作者の力量によるところが大きい。

物語の設定、構成、登場人物、ストーリー展開はもちろんのこと、細かい部分はよくわからないけど(わざと伏せてる?)読者をぐいぐいひっぱっていく力はものすごい。

語彙力がないせいで、いいたいことが伝えられずにもどかしいが、とにかくあれだ、「細かいことは気にせず、どんどん先へ進め!」ってことだ。


ストーリー的なところでもう一つ。

物語は三人の女性を中心に、3つのパートからなる。

母親が夫と娘を探して旅をするパート、家族からひどい扱いを受ける少女が守護者に引き取られていくパート、オロジェンの訓練組織で教育を受けた若い女性が組織の命令を遂行するパート。

それぞれの目線から描かれる世界はまったく違うのだが、根底にあるものは同じで、あるところで交錯し、パズルのピースがひとつ、またひとつとはまっていく。スリリングであり、謎解きであり、ファンタジーでもある。

同性として共感するところがあるかといわれると、多分ない、かな。

女性が主人公だけど、性別は関係ない。あくまでオロジェニーという能力を持つ人がどう生きていくのかっていうところに焦点が当たっているから。


『第五の季節』は2015年にアメリカの作家N・K・ジェミシンが発表した長編小説で、三部作といわれている。『第五の季節』 "The Fifth Season"、『オベリスクの門』 "The Obelisk Gate"、 "The Stone Sky"。

『第五の季節』の続編、『オベリスクの門』は最近刊行された。もちろん購入済み。

あんな終わり方をされたら続きを読まない選択なんて、ありえない。

さあ読むぞ!