行けるところまで行ってみよう

1年たつのは早い。早すぎる。ここまできたら行動あるのみ。後悔先に立たず。

2021-01-01から1年間の記事一覧

『新世界より』 SFでホラーで冒険小説だけど人間の本質を考えさせられる深い物語

いやー驚いた。 すさまじい物語だよこれは。 SFであり、冒険小説であり、ホラーでもあり、ミステリーでもある。 こんなにすごい小説を今まで知らなかったとは、そりゃ活字中毒を語る資格はないわ。 『新世界より』 貴志祐介 舞台は今から1000年後。日本には9…

『善医の罪』 久坂部羊 / 延命治療と尊厳死を考える

難しい問題だ。 本を一冊読んだくらいで結論が出るものでもなく、普段から自分の最期を考えておくべきだと思わされた。 くも膜下出血で救急搬送された横川達男は、一命をとりとめたものの意識はもどらず、自発呼吸も不十分だった。主治医の白石ルネはこれ以…

『黒い家』 貴志祐介 / 怖い怖い世界と人間の本質

怖いよ怖い。 誰もいない部屋、電気を消して横になる。 耳をそばだてると、微かに音がする。 きゃあーーーーッ! 『黒い家』は第4回ホラー小説大賞受賞作らしい。知らなかった。 昼休み、Kindle Unlimitedで無料で読める本作を見つけ、読み始めた。 あれよあ…

『初秋』 ロバート・B・パーカー / 男くささと力強さにやさしさをプラスした物語

思ったより新しくて読みやすかった。 なんといっても1988年発行だからね。 もっと古くさく感じると思ったよ。 ハードボイルドの名作と言われるロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズ。Wikiによると全40作もあるらしい。全部は邦訳されていないようだ…

『許されざる者』 レイフ・GW・ペーション/ 時効が成立した事件の犯人の末路

結局、そうなるのね・・・。 それにしても、やっぱり出てきた小児性愛、暴力、貧困、家庭崩壊。 スウェーデン(北欧)ミステリーにはつきものなのか? 国家犯罪捜査局の元長官ヨハンソン(67歳)は、屋台でホットドックを買った直後脳塞栓で倒れ、病院に救急…

『カーテンコール!』 加納朋子 / 耐えられないと思ったら逃げていいんだよ

逃げてもいいんだよ。 助けて、といっていいんだよ。 いわた書店の一万円選書、ラスト3の1冊。 閉校が決まった萌木女学園大学で、単位を落とし卒業できなくなった学生たち。なぜ授業に出席できなかったのか。その原因はそれぞれが抱える生きにくさにあった。…

『武器よさらば』 ヘミングウェイ / 行動を描くことで心情を読み取らせる

そうかー。そういうことね。 余韻がね。 意味不明な読後の一言。 でも、それしかいえない。とにかくそういうことだ。 第一次世界大戦中、イタリアの傷病兵搬送車部隊に所属するアメリカ人フレドリックは、任務中に敵の砲撃を浴び重傷を負う。病院に運ばれた…

今度は「隆祥館書店」の一万円選書が当たったよ!

2ヶ月前、いわた書店の一万円選書が当たり、本が届いた。9タイトル11冊。(いわた書店の一万円選書、当たったよ!届いたよ!) そして今回、めでたく隆祥館書店の一万円選書が当たり、今日本が届いた。 全10冊、タイトルは以下。 『エンド・オブ・ライフ』 …

『ハロー・ワールド』 藤井太洋 / 国境を感じさせない物語

プログラム書く人には、国境なんてないんだ。 『ハロー・ワールド』の世界は難しい。 けど、なんとなくわかる! 楽しめちゃう! 本作にはタイトルの「ハロー・ワールド」の他に4つの短編が収められている。 自称「何でも屋」のエンジニア、文椎泰洋(ふづい…

『短くて恐ろしいフィルの時代』 ジョージ・ソーンダーズ / 現代版寓話、脳が落っこちる!

これは寓話か? 空恐ろしいおとぎ話か? 現代版寓話だな、きっと。 中編の部類に入る短めなお話。 <内ホーナー国>は領土が狭く、国民が1人しか入れない。残りの6人(ということは内ホーナー国民は全員でたった7人)は<内ホーナー国>を取り囲む<外ホー…

『ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー / おもしろいから一度は読むべし

こんなにおもしろいって知ってたら、もっと早くに読むんだった! 『ロング・グッドバイ』がミステリーだったとは、読み始めるまで知らなかった(いや読み始めてさえも気がつかなかった)。 なぜって、村上春樹が影響を受けた作家だから。 村上春樹は『グレー…

『やがて訪れる春のために』 はらだみずき / 次の世代を生きるものにバトンを渡せ!

「ハルばあ」から「まめ子」にバトンは渡った。 これでいいんだよ。 真芽(まめ子)は小学校を卒業するまで両親と弟と祖父母の6人暮らしだった。手狭になった家を建て替えるというとき、両親と祖父母の間で何らかの問題が生じ、真芽ら4人は祖父母を残して街…

『玩具修理者』 小林泰三 / 途中下車できない気持ち悪さ

気色悪い。吐きそう。 でも気になる。 最後まで読んでしまう。 好きかも、こういうの。 『玩具修理者』は「玩具修理者」と「酔歩する男」の2つの短編が収録されている。 壊れたものなら何でも直してくれる玩具修理者。その名の通り玩具でも、死んだ猫でも。…

『午前三時のルースター』 垣根涼介 / それはないよ、その展開は受け入れ難い

それはないよ。 それじゃあんまりだよ。少年はどうすればいいの? そういうの好きじゃない。 旅行代理店で働く長瀬は、得意先の宝石店社長から16歳の孫・慎一郎のベトナム旅行に付き添ってほしいと頼まれる。慎一郎の父親は4年前ベトナムの工場視察に行った…

『ワイルド・ソウル』 垣根涼介 / 自由になりたかった男たち

みんな自由になりたかったんだよ。 それぞれ形は違うけど、最後は解放されてよかった。 これ、岩田書店の一万円選書で選んでもらった一冊(上下で二冊)なんだけど、岩田社長、私の好みをドンピシャ射抜いてくれた。 好きだな〜こういうの。大好き。 エンタ…

『運命の証人』 D・M・ディヴァイン / 証人の一言で自信を取り戻した被告人

ふーん、やっぱりそういうことね。 おもしろかったけど、最後はちょっとできすぎじゃないか? 法廷では2件の殺人事件の裁判が行われていた。被告人は弁護士のジョン・プレスコット。彼は無罪を主張していたが、目の前で行われている審理には無関心だった。6…

『火星へ』 メアリ・ロビネット・コワル / 宇宙SF色が濃くなって、さらにおもしろくなった

『宇宙へ』よりずっとおもしろいじゃん。 ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞受賞の『宇宙へ』よりおもしろいってどういうこと?! 私の感性がおかしいのか? 物語は前作『宇宙へ』のラストから3年後、主人公の女性宇宙飛行士エルマ・ヨークが月面から地…

『宇宙へ』 メアリ・ロビネット・コワル / SF + ヒューマンドラマ

これはSFか? Wiki によると、サイエンス・フィクション(SF)とは 科学的な空想にもとづいたフィクションの総称 だそうだ。 ならば、確かに『宇宙へ』は SF小説なのだろう。 しかし、これから読む人には「SF小説と思って読み始めると転ぶかもよ」と言いたい…

『誠実な嘘』 マイケル・ロボサム / 嘘の背景にあるもの

これってストーカーじゃん! ・・・って思いながら読み進めたら、 違った!! そんな単純な話じゃなかった。 これはもうね、前情報なしに読んでほしい。 レビューも、何なら裏表紙のあらすじも読まずに、真っ新(まっさら)な気持ちで向かってほしい。 そう…

『もう耳は貸さない』 ダニエル・フリードマン/ 老いと死刑制度

あれぇ〜? このシリーズ、こんなだっけ? アクションあり、ハラハラドキドキ冒険小説を期待していたんだが・・・。 『もう年はとれない』『もう過去はいらない』ときて、『もう耳は貸さない』、シリーズ3作目。 元メンフィス市警殺人課刑事のバルーク(バッ…

『オービタル・クラウド』 藤井太洋 / 壮大なスケールと世界観は世界級

これ、日本の小説?! やるじゃん、日本! やるじゃん、藤井太洋! 日本にもこんな小説あったんだーッ! 『オービタル・クラウド』は、流れ星予報サービスのサイトを運営する主人公が、何者かが仕掛けた宇宙テロに挑む話だ。 まず何といってもスケールがデカ…

『怒涛の砂漠』 渡辺裕之 / 疾走感がヤバい、息切れ寸前!

ふーーーッ、走ったなぁー。 久しぶりの全力疾走、この爽快感! あ、走ったの私じゃないよ、わかってると思うけど。私はリベンジャーズの面々の背後霊、もとい守護霊の如く、遅れないように彼らの背中に乗っかってただけ。 リベンジャーズ。自分たちの信じる…

『慈雨』 柚月裕子 / 物語のラスト、元刑事に降り注ぐ雨は優しかった

なるほど、そういうことね。 物語はここまで。この先は想像に任せるってことね。 定年退職した元刑事が妻と四国お遍路さんの旅に出る。旅先の宿で知った少女誘拐事件が、16年前に自分が手がけた少女誘拐事件と酷似していることに気づいた主人公は、後輩を通…

『書店主フィクリーのものがたり』 ガブリエル・セヴィン / フィクリーはすべての読書人の代弁者

不思議な物語だった。 島にたったひとつの書店「アイランド・ブックス」の店主が、店に置き去りにされた子どもを引き取り育てていく話だ。 読み終わってもう一度あらすじを追ってみると、登場人物に(主人公の書店主以外の人物にも)起きた出来事はほとんど…

『きのうのオレンジ』 藤岡陽子 / 読後は空を見上げたくなる清々しさ

これ、絶対ヤバいやつ。 絶対ヤバい。 涙腺崩壊するやつじゃん絶対。 と思って読んだけど、大丈夫だった。緩みかけたけど。 『きのうのオレンジ』は、若くしてがんを宣告された男性と、彼を支える家族の話だ。 聞いただけで重くなりそうだけど、読後は意外に…

『茗荷谷の猫』 木内昇 / 人の生き様から自分の生き方を見つめる

『茗荷谷(みょうがだに)の猫』は9つの短編からなる連作である。 連作はいくつか読んだことがあるが、それはたいてい同じ時間軸で繰り広げられる物語の集まりだった。 しかしこの『茗荷谷の猫』は、江戸時代から昭和30年代までの長い時間の流れの中で、日常…

『三時間の導線』 アンデシュ・ルースルンド / 疾走感の後、やるせなさに襲われる

遺体安置所に昨日まではなかった遺体が一体紛れ込んでいた。 誰が、何のために、どのようにして運び込んだのか・・・。 何という衝撃的な始まり。そそられる導入。一気に物語に引き込まれるじゃないか。 ストックホルム市警・警部グレーンスシリーズ7作目(…

『鍵穴』 ヨルン・リーエル・ホルスト / 動機を想像して読むのがいい

『カタリーナ・コード』に続く警部ヴィスティング・シリーズ13作目(本国では13作目、邦訳では3作目)。 今回のあらすじは・・・ 急逝した大物政治家の別荘で大金が詰まった段ボール箱が見つかった。 汚職か? 大金の出どころを極秘に操作せよ! 検事総長か…

『三分間の空隙』/ スケールはでかく、コロンビアの少年に胸が痛んだ

スケールがでかい。でかすぎる。 物語は中米コロンビアから始まり、スウェーデン、アメリカを何度も往復する。 スウェーデン人の犯罪者がアメリカ麻薬取締局に雇われ、コロンビアの麻薬組織、ゲリラ部隊の一員となり潜入捜査を行う。 警察小説だけど主人公は…

いわた書店の一万円選書、当たったよ! 届いたよ!

北海道砂川市にあるいわた書店の一万円選書に応募したのが、確か去年の10月。 そして毎月、当選した人のツイートを見て、いいなぁ〜、私も当たらんかな〜、くじ運悪いから無理やろな〜、と思ってました。 そしたらなんと、6月分抽選で見事当たった! ほんと…